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コラム

ナラティブ ~アルツハイマー型認知症Aさんとのかかわり~

長岡病院・湘南の丘で、患者さま入所者さまがどのようなケアを受け、どう過ごされているのか、エピソードをご紹介いたします。

(写真はイメージです)

心不全の治療で入院した80代女性のAさん。全身に浮腫があり体重は60kg前後ありました。治療がすすむと体重は40kg前後まで減り、スタッフが手で支えれば歩行もでき、排せつも介助すればポータブルトイレでできるようになりました。

 しかし、心不全が回復する一方で認知症の症状が悪化し、妄想や幻覚が現れ始めました。アルツハイマー型認知症です。

 ベッドからひとりで起き上がると転落する恐れがあるので、センサーマットを付けたのですが、帰宅願望や水洗トイレでの排せつを強く望まれ、スタッフに制止されると怒りっぽくなり、鋭い目つきで暴言を吐くようになりました。そこで、Aさんらしく安全安楽に過ごしてもらうにはどうすればいいのか、スタッフが集まりカンファレンスで意見を出し合いました。

 まず、徘徊の対応として、空いている4人部屋にAさんのベッドを1台だけ置き、墜落の危険があるベランダには手の届かない所に窓ロックをつけ対策し、Aさんが自由に歩ける環境を作りました。Aさんの日課は買い物に行くことでしたので、病棟で手提げバッグをご用意し、Aさんの気が済むまでスタッフが付き添いながら廊下を一緒に歩きました。Aさんの幻覚や妄想に合わせて、スタッフはスーパーの店員や家族、隣人などになりきりお話をしました。こうした関わりを毎日繰り返すことで、Aさんに笑顔が戻り、顔つきも穏やかになっていき、やがて介護施設へと退院することができました。

長岡病院では治療だけでなく、こうしたケアも大切にしています。
病院での生活を快適に過ごしていただくために、介護職が“演じる”ということをカンファレンスで提案し、Aさんが話したことや行動をスタッフで共有し、対応の統一を図りました。

 拘束をしない、否定をしない、自尊心を傷つけない関わりを大切にして、介護の理念である個人の尊厳、患者さん主体の自立への手助けに繋がればと日々のケアを深めています。