神奈川県茅ヶ崎市赤羽根3685
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コラム

ナラティブ ~面会に来てよかった~

Dさんは介護施設から入院されました。脳梗塞が既往にあり、誤嚥性肺炎と心不全を繰り返していました。
入院後も誤嚥性肺炎となり、経管栄養となりました。当初は言葉数も多く表情もあり、歌を歌うこともありましたが、心不全を繰り返すうちにベッド上での時間が長くなり拘縮も強まり、スキントラブルも増えて発語も聞かれなくなり、開眼している時間も少なくなってきていました。


ある時、面会に来られたご家族が帰り際に「声をかけても反応がなくて(来ても)つまらないね」と寂しそうにお話しされていました。ご家族のことを把握できてもお名前を呼べるのは娘さんだけで、口数も少なくなって声掛けに反応も乏しくなってきていました。
コロナ禍であり、面会制限があったためなかなか面会できない状況の中、せめてご家族が面会に来られた時は有意義な時間を過ごしていただきたいと思いました。Dさんの心肺機能が低下しないような離床、日常生活機能や認知機能の維持についてどうすればいいか、病棟スタッフで話し合いました。

まずは、Dさんとかかわる時間を増やしタッチングや離床を増やし、脳の活性化につなげメリハリのある生活を提供できればと考えました。
また、介護スタッフからユマニチュードというケアの手法の提案があり活用しました。目と目を見てコミュニケーションを図り(視覚)手で行うタッチングによる触れ合い(触覚)、たくさん話しかける、または起きて周りの音を聞き(聴覚)、発声の準備として口腔ケアを念入りに行い(味覚)、アロマを行うことで嗅覚を刺激し五感へしっかりとアプローチしました。
リハビリスタッフからは、可動域や覚醒状況の変化などの意見をもらいました。
誤嚥性肺炎予防として端座位や車いす乗車することで肺の広がる範囲も大きくなり、酸素も取り入れやすく循環も良くなるきっかけになりました。
こうして、日々アプローチを続けていくと、Dさんの筋緊張も緩み、開眼することも増えてきました。

面会が再開し、久しぶりにDさんと対面したご家族は、車いすに乗車したDさんの姿を見ることができて嬉しそうでした。ご家族自身も高齢で、介助されながら面会に来ることは大変なことです。そのうえDさんの弱っていく姿を見るのが辛く、受け入れがたい気持ちから面会をためらっていたとのことでしたが、「来てよかった」とお言葉をいただきました。

ご家族にとっても患者ご本人にとっても面会は貴重な時間であり、いかに大切なことか改めて実感する機会となりました。